1:ひきこもりとは?

厚生労働省の「ひきこもり」定義を引用すると『仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態。時々は買い物などで外出することもあるという場合も「ひきこもり」に含める』とあります。
ちょっとコンビニで買い物ぐらいでは「家族以外との交流」とはならないのは想像しやすいと思います。場合よっては何も言わずに買い物できますから。インターネットの掲示板などで匿名のやり取りをすることが、果たして「人との交流」になるのかは微妙なところです。

実際の「ひきこもり」は程度に差があり「家族とも顔を会わせず自室に籠る」など本当に外出が難しい場合もあれば、「1ヶ月に一度ぐらいは知人に会う」「たまに地域の活動に参加している」など外出や人との交流ができる場合もあります。

外出が割とできる場合、よく「ニート」と一緒にされてしまうことが多いですが「人との交流」という点で違いがあると思います。これは個人的な意見ですが「人との交流」や「人付き合い」は経験に基づいた“自信”に左右されると思います。人とあんまり話したことが無い、最近誰とも話して無いってなると徐々に自信は失われてしまいますし、挫折を経験してしまうと持っていた自信を失ってしまう。「外出できるけど人との交流はできない」という人はけっこういると思います。

「ひきこもり」の傾向として男性が多く、10~20代からのひきこもりが多いです。最近は長期化して30~40代の人たちが増えています。

2:不登校とは?

「不登校」もしくは「登校拒否」は文字通り「学校に行っていない状態」のことです。しかし、よく使われる言葉だけに「不登校って何?」と聞かれると答えるのは難しいです。定義が色々とありますので。広い意味での「不登校」は一般的に2パターンあります。1つ目は「不就学・非就学」のこと。いわゆる学齢期なのに学校に在籍していない状態。2つ目は「長期欠席」のこと。学校に在籍しているけど登校できない状態。休学も含まれます。

文部科学省の「不登校」定義を引用すると『何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの』とあります。

では「不登校」になったらどうなるかというと、家に「ひきこもる」事がほとんどです。つまり原因は各々ですが「ひきこもり」という現状(結果)は同じになります。

3:不登校とひきこもりって同じ?

一般的に学齢期を「不登校」、それを過ぎたら「ひきこもり」といった分けられ方をしていますが、本来は「不登校」と「ひきこもり」はしっかりと区別する必要がある事柄です。
「不登校」は何らかの理由で学校に行けないこと。「ひきこもり」は他の人と話さず家から出ないこと。まったく別次元のことを説明していますから。しかし結果が同じように見えてしまうので一緒にされていると考えられます。

ですが共通することもあります。何かしらの理由から社会と接することを「避けている」ことです。さらに言い換えるならば精神的危険から「避難している」ことです。不登校ひきこもりともに「緊急避難」としてのやむを得ない行為であり、誰も望んでそうなっている訳ではありません。

4:不登校ひきこもりの原因って?

不登校ひきこもりの原因は一概には説明できるものではありません。原因やひきこもりになった過程も人それぞれだからです。

例えば「学校・職場でのいじめ」「仕事・学業での失敗」「就学・就職の失敗」。そういったことから「うつ病」「依存症」などの症状、または「自信の喪失」「気力の減退」から社会参加や人との交流を避けるようになる。そして結果として「不登校」「ひきこもり」になります。

原因自体、本人すら分からないこともたくさんあります。でも不登校ひきこもりになったことはハッキリと結果に表れます。つまり原因は各々あって「わからない」というのが事実です。

5:不登校ひきこもりに特効薬ってあるの?

不登校ひきこもりで「これをやればすぐに改善する」という特効薬は残念ながらありません。例えば「風邪」の症状を考えてみましょう。熱が出たり、咳込んだり、頭痛が酷かったり、悪寒がしたり、関節が痛んだりなど、色々な症状がその時ごとに違った形で表れます。病院の先生は症状に応じて薬や治療法を選んで治そうとします。では「風邪」そのもの、全ての症状に効く薬なんてあるでしょうか?市販の薬は「広く浅く」効くものですから、重い風邪には効果が薄かったりします。

不登校ひきこもりも同じように症状はさまざまです。単に人と接したくない、人付き合いが苦手な場合もあれば、躁鬱症状、依存症といった精神疾患もあります。発達障がいが引き金となってしまった場合もあるでしょう。人間誰しもが抱いている感情が強くなり過ぎることだってあります。希死願望などはその典型だと思います。
どうでしょう?皆さんから見て不登校ひきこもり全てに効果のある特効薬は存在すると思いますか?

6:脱不登校・脱ひきこもりしたいけど…?

「学校に行けば大丈夫」「社会復帰すればもう安心」というのはハッキリ言って幻想です。不登校ひきこもりは社会と接することで発生する精神的危険から「避難」している状態です。つまり社会生活を過ごす限り危険と隣合わせです。
学校に行ったとしても心無い言葉を再び浴びるかもしれません。職場で過剰な労働を強いられ、精神を擦り減らすこともあるかもしれません。これは不登校ひきこもりになったことがない人でも同様です。

再びこの危険に遭遇する恐怖を経験者はよく分かっています。苦しい経験を忘れる訳ないのです。経験者が社会への馴染めなさや不安を抱えつつも、折り合いを付けて生活していることは想像に難しくないと思います。
不登校ひきこもりを脱することはありません。不登校ひきこもり経験を心に刻み、社会生活での精神的危険を「不登校ひきこもりでない方法」で避ける努力をする。それが経験者です。

経験者であろうと経験がない人であろうと、常に不登校ひきこもりの危険はあります。「脱不登校」「脱ひきこもり」があると信じている人ほど陥りやすいものかもしれません。