当事者と企業団体との就労に関する協働 『親の会たんぽぽ』と『長崎県保険医協会』による実践の感想

お久しぶりです。アニです。

コロナウイルス流行で色々と影響が多い生活を過ごしておられると思います。色々と悲しい話も多くなってきました。

ホームページの更新自体、少々滞っております。

理由としてはコロナウイルス流行でイベント関係がなくなり、ネタがないというのもあるのですが、アニ自身の個人的にバタバタしているのが一番の理由です。

数少ない読者の方、申し訳ないです。

今回の投稿記事ですが、いつもとちょっと違う内容となっています。

今までは他団体の紹介やイベントの報告などが多かったですが、今回はアニ自身が関わった不登校ひきこもり当事者の就労の実践例に関してご紹介したいと思います。

長崎県下における不登校ひきこもり当事者への就労支援の状況

長崎県下での民間の当事者への就労支援の取り組みとしては、佐世保の『NPO法人フリースペースふきのとう』が自前の就労支援をしている事例、『認定NPO心澄』が提供しいる就労支援(B型作業所など)があります。

また、こちらはアニが見聞する限りですが、ある福祉医療法人がひきこもり当事者への支援を検討したりしています。

行政関係ではサポートステーション事業、ヤングハローワークがありますが、民間の取り組みとしての就労支援は絶対数が少ないのが長崎県の実情です。

まして協働となると、更に数は少なくなります。

協働としては『NPO法人フリースクールクレイン・ハーバー』と『九州調理師専門学校』が提携して行っている事例があります.

カリキュラとメンタルケアの提供という点から考えると「半就労・半就学」といった感じの印象を受けます。

これらの事例を見て、みなさんお分かりとは思いますが、全て「当事者が就労するまでの支援」であって、実際に「就労している訳ではない」という点です。


『親のたんぽぽ』と『長崎県保険医協会』の協働

今回紹介する事例は、長崎市を中心に活動している家族会『親の会たんぽぽ』と『長崎県保険医協会』が協働で行っている就労の場の提供です。

『親の会たんぽぽ』に関しては、このホームページでもけっこう取り上げているので説明不要かと思います。

『親の会たんぽぽ』についてはこちら

『長崎県保険医協会』については少々説明が必要かもしれません。

保険医協会は全国的に存在する組織で、全国組織、各県にもあります。長崎県では『長崎県保険医協会』となります。

保険医(健康保険の診療に従事する医師または歯科医師)のみなさんへ、各種専門的情報を発信したり、相談に応じたりなどする団体です。

例えば、診療報酬の話は病院にかかればけっこう聞きます。「~が何点」だとか。

診療報酬も年度に応じて変化していきます。大きい病院なら病院ごとに医療事務の人がやってくれるでしょうが、個人で開業しているお医者さんは自分でやらないといけないことも多いです。

そういった情報を発信したり、相談に応じたりしています。もちろん、これは業務の一部ですが。

他にも社会貢献活動も行っておられます。詳しくはホームページを見てください。

『長崎県保険医協会(ホームページ)』はこちら

協働の主な内容

長崎県保険医協会の業務に会員の方々への資料配布・郵送というものがあります。

保険医協会の新聞、各種催し案内、この時期なら診療報酬に関するちょっとした辞書みたいな資料などもあります。他にも未加入のお医者さんに案内を出したり。

1回あたり平均約1900通の発送があります。これが月平均で3から4回程度あります。

この資料発送準備のアルバイトを、親の会たんぽぽから紹介された不登校ひきこもり当事者・経験者が行うというものです。

親の会たんぽぽからは世話人兼バイトリーダー的な役割を持つスタッフ(不登校ひきこもり経験者)が毎回アルバイトに参加し、他の当事者・経験者と一緒にアルバイトを運営していきます。

基本的には普通のアルバイトと変わりありません。

ただ運営主体が不登校ひきこもり当事者・経験者にあるという点が、全国的にも見ない例かもしれません。

協働までの経緯

実はアニもそこまで詳しく知りません(苦笑)

最初は長崎県保険医協会の職員の方から親の会たんぽぽへ「こういった仕事があって、当事者・経験者でもやれないだろうか?」という話から始まったらしいです。

親の会たんぽぽスタッフをしている古豊慶彦さん(他、子ども権利オンブズパーソン代表世話人など多数の活動を行っている)が主体となって話が進み、たまたまヒマをしていた(?)アニにも話がありました。

まずアルバイト自体がどのような内容か確認、引継も兼ねて1年間、古豊さんとアニも含めて4名、前任の方たちと一緒に仕事をしました。

この4人をコアメンバーとして、アルバイト運営を行っています。

その後、親の会たんぽぽを通じて…というか古豊さんが出来そうな子たちに声をかけて参加者を募りました。

前任の方々が退職するのと入れ替わりで、今の体制でのアルバイトを行っていくこととなりました。

アルバイト参加者は、コアメンバーの4人、そして不登校ひきこもり当事者・経験者のアルバイトが6名程度です。

仕事の流れ

月初めに古豊さんからアルバイトのシフトが送られて、各自希望日を返信します。

その後、シフトが決定します。1人当たり月2・3回のアルバイトとなります。

仕事は10:00から16:30、休憩1時間となっており、10時前に全員揃います。

10:00になったら、その日のバイトリーダーから仕事内容の説明があり仕事が開始されます。

新聞を折り込み、封筒の宛名などをチェック、資料を封筒に入れ、セロテープで封し、ファイバー(封筒を入れるケース)にどんどん入れていきます。

終わりに近づくと、バイトリーダーは郵送料の計算をして、担当の職員の方に発送票を持って行きます。

一番簡単な仕事の流れですが、実際には資料がいっぱいで事前準備があったりなど、その時によって仕事内容は変わってきます。


実際にやってみて アニの感想

アニはバイトリーダー代理的な役割で参加していましたが、実際には他の3人にお任せ気味でした。

はい、良くないです(苦笑)

なのでアニ自身は全体的に大丈夫かどうかを注意を払うことにしてました。

業務の進捗はもちろん、アルバイトの当事者・経験者の様子を伺い、何かあったら少し出しゃばるぐらいのスタンスで良いかと考えて関わっていました。

また古豊さんが参加できない時、ちょっと気になったことがあったら報告をしていました。これはアニに限らずですが。

「今日は○○くん調子悪そうだった」「仕事、今日はマジでしんどかった」とかですね。

そんな立場であるアニの感想です。

遅刻・ドタキャンはほとんどない

不登校ひきこもり当事者・経験者を仕事で雇う際、一番気にされるのが「ちゃんと仕事に来てくれるのか?」です。

アニや他の3人は基本的に仕事してたり、何か仕事に近い活動していたりと、ある程度馴れています。

アニも最初は「けっこうドタキャンとかあるだろう」とか思っていました。でも蓋を開けたらビックリ、1年間で遅刻はほんの数回でした。

その内の1回はアニですが…(;´Д`)

ドタキャンも同様で、ゼロではありませんでしたが、余程のことでない限りありませんでした。

月に数回なので、そこまで負担がないというのもあるでしょうが、いつも寝不足気味の子でもちゃんと仕事に来ていました。

がんばって欲しい時は、がんばってくれる

仕事が忙しい時もあります。そんな時、アルバイト全員でがんばって仕事を終わらせないといけません。

ただ、そんな時に不登校ひきこもり当事者・経験者に対して「今日はがんばってくれ」とお願いして、しかも応えてくれるか。

雇用する側やバイトリーダーからすると、当然気にしてしまいます。

アルバイト参加者には、眠そうにやっている子、実際に「キツイ」と口にする子、喋りはじめると手が止まってしまう子など。

仕事をする上では、ちょっと不安にさせられる子がいるのも事実です。

そんな子たちでも「今日は残業をお願いしたい」と言えば引き受けてくれますし、逆に「今日は残業しなくても大丈夫ですか?」と聞いてくれる子もいます。

みんな踏ん張って仕事を終わらせようとしてくれます。

職場で気にしないといけないことは、言わないといけない

そこまで悪いことをしていた訳ではないですが、塩梅がわからずにやってしまったことはありました。

例えば、声のボリュームです。

発送作業の場所と事務所は分かれているのですが、それでもドアは開けっ放しなど声は聞こえます。

発送作業は単純な作業ですので、多少はおしゃべりをしながら行います。

話が盛り上がると声が大きくなるのは自然なことですが、それを事務所まで聞こえるほどやって良いかを言われれば、当然違います。

職場で仕事をするということに慣れていない子は多くいるので、職場での立ち振る舞いがわからなくて、ついやってしまうことが、特に最初の頃はありました。

こういう時は注意をしないと気がついてくれません。ただ注意すれば必ず気をつけるようになってくれます。

真面目な子には配慮が必要

意外と「疲れた」とかアピールしてくれる子は、そこまで配慮する必要ありません。ムリな時はムリと言ってくれるからです。

ちょっと配慮が必要なのは黙々と作業をやる真面目な子です。

真面目な子は本当に真面目なので、手を抜かず全力でやってくれます。逆に言うと「手を抜けない」ということでもあって、無理をしている可能性はけっこうあります。

バイトリーダー側としては、適度に「手を抜く」ことが重要であることに気がついてくれて、その方法を知ってもらえるようにしないといけません。

個人的にはこれが一番難しいと思います。

バイトリーダーの立場はそれなりにつらい

実際に世話人兼バイトリーダーをするコアメンバーには色んな負担があります。

仕事が終わるように進捗を気にしないといけませんし、他のアルバイトの子たちの体調が大丈夫かも配慮しないといけません。事務局との折衝もありますし、最後の郵送料の計算も待ってます。

忙しい時はイライラもします。

コアメンバーはバイトリーダーとピアサポートを兼任しているような状況ですから、当事者・経験者側の観点だけでなく、支援的な観点も必要とされるため、それなりに辛いことも多くなります。


協働実践の意義

企業団体側、この場合は長崎県保険医協会の声を反映していないので、意義を語るには足りない部分があると思いますが、この両者の協働実践に関して、アニ的には以下の3つの意義があると思います。

何かをしている状態の維持

一般的に就労支援というものは「次へのステップ」として捉えられます。それ自体は正しいですし、必要なことであると思います。

ただ「次へのステップ」のためには「助走」が必要であると感じます。

就労、次へのステップへの移行がスムーズに進めば良いですが、現実は失敗の繰り返しです。

アニ自身、就労に際して失敗を多くしていますからわかりますが、履歴書や面接の技能を覚えたとしても、就労に直ぐつながる訳ではないですし、就労したとしても、仕事が続くかどうかは別問題です。

就労において一番良くないのは、就労活動疲れをして「何もしなくなる」状態です。

「何もしていない」という自覚は、不登校ひきこもり当事者にとって最も苦しい状態だと思います。

「何かをすればいい」と簡単に言う人もいますが、疲れている人には無意味な言葉です。動きたくても動けないのですから。

アニは「次へのステップ」を意識し過ぎる支援はこれを招きやすいと考えています。

「何かをしている」助走状態を維持し、機会があれば少しチャレンジしてみるぐらいの「次へのステップ」の方が、より確実なステップを踏めると考えています。

この助走、何かをしている状態を維持できる場を提供しているのが、この協働であると考えています。

もちろん「次へのステップ」を考えるならば、他の就労支援と併用するのが良いと思います。

賃金があるというモチベーション

「自分のしたい仕事をする」のが理想的ですが、これもまた現実的ではありません。

仕事の中には「自分のしたくないこと」が往々にしてあるからです。

したくないことをするためには、何か別のモチベーションを持つ必要があります。つまり賃金です。

仕事をすればお金がもらえる。単純ですが、就労のモチベーションの際たるものであると考えます。

いわゆる就労支援では賃金は発生しません。

ふとした瞬間に「自分は何故、就労支援を受けているのか?」と思ってしまった時、どのようにしてモチベーションを持ち直すか。

アニ個人的には、いわゆるB型作業所などの就労支援では難しいと思います。

「何もしていない」状態にならない工夫の一つとして、賃金というモチベーションの持ち方は、決して間違いではない手段だと思います。

ピアサポートの方法として

ピアサポートとは「同じような立場の人によるサポート」という意味です。

障がい者、依存症の支援で用いられることが多い支援方法ですが、不登校ひきこもりの分野でも同様に存在します。

親の会たんぽぽと長崎県保険医協会の協働では、アルバイトの運営主体が不登校ひきこもり当事者・経験者で構成されています。

行っている内容としても、ピアサポート主体の作業所と同様のことを行っていると言えます。

ピアサポートの問題点として、ピアサポーター(支援する側の当事者・経験者)がボランティアベース(有償ボランティアの域を出ない)であることです。

続けるためには、支援する側が出費をしなければならない。

もちろんこのアルバイトだけでは、生活することはできませんが、少なくとも出費はしなくても良い。

継続のためには重要なことです。


今後の改善点

この協働にも改善点がない訳ではありません。

長崎県保険医協会側の声は正直わからないので、あくまでアルバイトをしていた側の話としてですが。

アニとしては以下の2点は、今後改善の余地があると思っています。

メンバーが抜けた場合

今のところ古豊さんを中心にアルバイト運営をしています。人員としてもある程度足りている状態です。

アニが今回、この記事を書いている理由の一つとして、アニがこのアルバイトを辞めるからです。理由は別の仕事に就労し、こちらのアルバイトの時間を確保できなくなったためです。

アルバイトに参加してくれた1人も、別の仕事をするため辞めたことがありました。

メンバーが抜ける時は、新しい道を見つけるなどしたためですから、基本的に嬉しいことです。

しかしアルバイトの人員が減ることでもあります。

不登校ひきこもり当事者・経験者を対象とした仕事ですから、当然そう簡単に次の人が来るという訳でもありません。

このアルバイトはあくまで「仕事」ですから、企業団体側としては、一定の人員は確保する必要があります。

人員が減り過ぎると、この協働を解消しなければいけません。

コアメンバーへの負担

辞めるから言う訳ではありませんが(苦笑)

アニはともかく、他の3人の負担はある程度あります。コアメンバーはバイトリーダーとピアサポーターを兼任している状態です。

今のところは大丈夫と思いますが、今後、新しいコアメンバーを育成するか、そもそもコアメンバーをやれそうな人に参加をお願いするか、検討が必要かと思います。

それを言うなら「お前辞めんなよ」って感じですが(;´Д`)

ごめんなさい。アニにも生活があるのです( ;∀;)


最後に

アニ個人的には「何かしている」状態は、けっこう重要なことだと思います。

「何もしない」状態は焦りや不安、とにかくネガティブな方向に進みがちです。

就労支援を受けるというのは、当事者・経験者側にけっこうな心理的負担を強いることがあります。

「支援疲れ」を起こしてドロップアウトするのは避けなければなりません。

そういった点で月数回でも「就労」している事実、「何かしている」状態というのは、当事者・経験者の心理的余裕を生むと思います。

高く飛ぶためには、まず低く飛び続けることを覚える。

不登校ひきこもり当事者・経験者への支援で重要なポイントだと、アニは考えています。

親の会たんぽぽと長崎県保険医協会の協働実践例が、当事者・経験者、家族、支援者など、多くのみなさんの参考になればと思います。

最後に、長崎県保険医協会のみなさん、たいへんお世話なりました。

一緒にアルバイトへ参加してくれたみんな、本当にありがとう。


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