長崎県こども未来課『第1回子供・若者の支援に携わる人材育成のための講習会』に参加してきました

アニです。イベント参加の話は久しぶりです。

先日9月26日に出島交流会館で開催された、長崎県こども未来課主催の講習会『第1回子供・若者の支援に携わる人材育成のための講習会』に参加してきました。

講師は佐賀県にてひきこもり支援に取り組んでおられる、NPOスチューデント・サポート・フェイス(S.S.F.)の谷口仁史さん。NHKの某番組で取り上げられるなど、一般の方にも広く知られた支援者です。

今回の講習会では『アウトリーチと重層的な支援ネットワークを活用した多面的アプローチ』と題して、谷口さんをはじめS.S.F.が取り組んでいる支援の紹介、アウトリーチ概論、例題を用いたグループワークが行われました。

内容をちょっとだけですが、紹介しようと思います。

アウトリーチの概論

アニが谷口さんの話を聞きながら整理したものですから、ちょっと理解の仕方が違うかもしれませんけど、そこはご容赦をです。

アウトリーチの必要性 多くの支援者が関わっているのに失敗するのはなぜ?

ある20代のひきこもり当事者の方の場合、20人以上の支援に携わる関係者がいました。学校の先生にはじまり、学習支援関係、就労関係など。

本当に多くの関係者がいるにも関わらず、残念ながら改善する傾向はなく、最終的にS.S.F.へ訪れたそうです。

なぜ支援が上手く運ばなかったのか?

まず、ひきこもりの当事者とは“つながりを維持する力”が弱いという点があります。

人に関わるということは心理的負担も多分にありますし、当事者から継続的に支援に関わることはけっこう大変なことです。

次に多くの関係者が、当事者の課題に対して同じ情報・同じ認識をしていなかった点もあります。

各々の状況で情報の程度に差があります。そして同じ情報を話すとは限りません。多くの支援者と関わるということは、自分の辛い事情を同じように何回も話す必要があります。「また話さないといけないの?」と億劫になることを多いです。自分のことを話すことも非常に疲れることです。

結果、多くの支援者が、バラバラの情報を持ち、正確な実態を把握しないまま支援を勧め、そして失敗してしまった。

こういった事例を防ぐために必要なのが伴走するコーディネーター、つまりアウトリーチの必然性です。

各々の経験則に基づくのではなく、共通した指標に基づいた情報を共有し、最適なコーディネートをすることが必要です。

アセスメント指標と考慮する支援の段階

S.S.F.の場合、独自のアセスメント(評価)指標を用意しています。

対人関係・メンタル・ストレス・思考・環境の5項目を5段階評価しています。

例えば、対人関係のレベル5(良好)の場合、集団での対人コミュニケーションが可能で、日常的なコミュニケーションも出来る。逆にレベル1(最悪)の場合は対人恐怖症などで全く誰とも話せない、といった具合です。

ちなみにレベル1・2が一項目でもあると、深刻化しやすいそうです。アニは幸い大丈夫でした(笑)

この5項目は支援のコーディネートにも当然重要な役割を果たします。

『対人関係』の項目

対人関係がどの程度可能かを図る項目です。例えば、小集団に当事者を参加させる際の人と人とのマッチングで配慮されます。相性の良し悪しはありますし。

『メンタル』の項目

いわゆる精神疾患の可能性に関する項目です。

『ストレス』の項目

ストレス耐性の程度を図る項目です。当事者と支援者との個人間の対話で非常に考慮されます。接し方、配慮の仕方とか、依存関係にならないようにするためとかです。

『思考の項目』の項目

性格的な特徴から価値観など、当事者の考え方に関する項目です。

芳しくない場合は、集団参加や認知行動療法で改善されていきます。特に就労体験の意義に関する話はちょっと考えさせられました。

就労体験は単純に仕事に慣れるとか、集団行動に慣れるとかではなく、「全ての仕事に価値がある」ということを再認識させる点が重要だそうです。

不登校・ひきこもりで挫折した子の中には、いわゆるエリート街道を周囲から期待されてきた子も多くいます。

そういった子に限らず、報酬が低く、社会一般的に評価が低い(これが一番の問題である気がしますが…)仕事に対して低評価を下します。「こんな仕事意味がない」と。

S.S.F.の場合「職親」という制度を設けており、多様な職種の事業者の皆さんの協力を得ています。色々な仕事を体験させることによって「どんな仕事も価値あるものだ」と再認識させることが、就労への意識などを改善させることにつながると考えているそうです。。

これはアニの場合ですが、不登校の頃なんかはいわゆる「中二病」全盛期でした。奇妙な全能感と同時に、学校に行けなくなったという事実から「学校に行くやつが就くような、どうしようもない仕事なんか嫌だ。必ず出世してやる」とか思っていました。今思うと滅茶苦茶恥ずかしいですね。アニの黒歴史です(笑)

仕事って実際にやってみないと良し悪しが分からないところがあります。例えば、畑でトラクターを運転したら、農業へのイメージはけっこう変わりますよ。

『環境』の項目

当事者がおかれている環境に関する項目です。特に家族の課題ですね。

例えば、当事者ないし家庭に借金があれば、法律の専門家による債務整理などが必要なります。

この項目が悪い場合、精神的・物理的に、家族各々の課題を改善し、負担を軽減することが重要となってきます。

支援の段階に応じたコーディネート

上記のアセスメント指標に基づいて、S.S.F.では『導入期・安定期・展開期・終結期』の4つの段階に区分しています。

支援の重要な点として、段階が変遷することで変化する支援者と当事者の関係性を挙げています。

導入期:当事者と支援者との個人的な関係が強く影響を受ける訪問の初期段階、または小集団への参加する段階です。当事者と支援者が「イーブン」or「ワンダウン」の関係性が求められます。

安定期:集団参加や認知行動療法、就労体験などを行う段階です。当事者の「軌道修正」「適正化」を意識した関係性が必要となります。

展開期:安定期からの発展的な段階。このくらいから実用的なことに接する機会が増えます。今までの積み重ねを活かして「継続・発展」を意識した関係性が重要です。

終結期:当事者の精神的・社会的自立を考える段階です。当事者が支援から「分散・移行・離脱化」することを意識した関係性を作り出すのが必要です。離れなければならない時期ですから、お互いに寂しいでしょうけど。

この関係性の変遷を意識的に”調整する力”が支援者には求められます。

事前に集めた情報から支援の段階を判別し、それに応じた関係性に考慮しつつコーディネートをすることが、アウトリーチの肝でしょう。


アウトリーチの概論は大体こんな内容でした。他にもありましたけど。

アニ的には当事者と支援をつなぐ時の注意がけっこう身につまされました。

谷口さん曰く「安易に紹介すると支援への抵抗感や偏見を助長する可能性があるので、慎重にするべき」と話されていました。

この『不登校ひきこもり情報たーみなる』は「自分で自分に適した支援を探す」というセルフコーディネートを意図したホームページです。インターネットはある種の“安易さ”が特徴です。

しかしその“安易さ”が裏目に出て、悪い方向に導いているとしたら、アニ的にはとても残念です。

グループワーク

今回の講習会はグループワークが半分以上でした。谷口さんが実際に遭遇した例、S.S.F.の利用者の例などを題材にグループワークを行いました。

全部を詳しく話すのはアニが大変なので(-_-;)

なので恐らく一番盛り上がった(?)題を紹介します。皆さんも考えてください。

グループワークの例題

※当たり前ですけど、アニの方で必要な情報だけ抜粋して、若干改編しています。オリジナルの題材はもっと複雑です。

当事者(40代前半・女性)

  • 元教員・退職後接客業など短期派遣業に従事
  • 教員免許の他、2つほど資格あり
  • 長期のひきこもり
  • うつ病の症状あり
  • 父・母60代以上
  • 家計が苦しい

現在の状況:アウトリーチの成果によりうつ病も改善しており、就労への意欲を示している。

Q『自立に向けたプログラムとして推奨するのはどれ?』

さて問題です。あなたなら当事者の方へ以下のいずれを勧めますか?その理由・方法も答えてください。

  1. 居場所活動(相談者が自由に立ち寄れるカフェ形式の居場所)
  2. コミュニケーションセミナー(臨床心理士が実施するソーシャルコミュニケーショントレーニング)
  3. 商店街の清掃ボランティア
  4. 巡回図書ボランティア(入院病棟を巡回し本を貸し出す)
  5. PCセミナー
  6. 内職(1つ1円の造花の部品作り)
  7. 農業による就労体験

参加者からの答え

参加者の方の答えを何個か紹介します。

参加者Aさんの答え

A:コミュニケーションセミナー

理由と方法:職歴から考えて教えることに慣れている。アシスタントという立場から参加させる。

参加者Bさんの答え

A:居場所活動

理由と方法:まずは共感できる仲間を作るべき。

参加者Cさんの答え

A:内職

理由と方法:本人が改善傾向にあり、就労への意欲がある。家計を助けるという意味でも動機付けしやすい。

谷口さんの答え

正解という訳ではありませんが、谷口さんが実際に選択した答えです。

A:PCセミナー

理由と方法:「マイクロソフトの資格が取れますよ」と言って誘う。

実際にこの方はパソコン講習を受け、その後、S.S.F.やっている事業の手伝いをしたそうです。もちろん賃金ありです。谷口さんは言われませんでしたが、この方が資格を取ることを苦としない性格であることや、PCスキルは就労につながりやすい点も考慮したのではと思います。

さて皆さんはどうでしたか?


こんな感じで3時間以上の講習会でしたが、全然休もうとか思いませんでした。こういうのは久しぶりだったかもしれません。

アニは他の講習会・グループワークに参加したことがあります。それらと比べても大変面白かったです。

谷口さんの話が上手いというのもあるのですが、特にグループワークは事例が詳細かつ非常に具体的でした。現場に近い感覚と言えばいいのでしょうか、リアリティが全然違いました。

あえて苦言があるとすれば、ちょっと講習会を知るチャンスが少なかったかなと思いました。アニが知ったのも数日前でしたし。

仕事休んでも来たい人、けっこういたんじゃないかといいうのが実感です。非常に良かった講習会だけに、ちょっと残念です。

また11月24日に別の方を招いての講習会があるそうなので、時間があれば行こうかなと思います。


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