長崎県こども未来課『第2回子供・若者の支援に携わる人材育成のための講習会』に参加してきました

アニです。

前回に続き、11月24日に出島交流会館で開催された、長崎県こども未来課主催の講習会『第2回子供・若者の支援に携わる人材育成のための講習会』に参加してきました。

アニの知り合い多めでしたが(笑)

講師はNPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さん。神奈川県で子ども・若者支援をされている支援者です。

今回の講習会は『学校に不適応を起こす生徒たち ~アウトリーチを活用した予防的支援~』と題して、NPO法人パノラマが神奈川県立田奈高校にて実施している「ぴっかりカフェ」を中心に、学校を通じた“予防的支援”について話されました。

アニが聞きながら勝手に解釈している点もあるので、ちゃんと石井さんの話を反映しているとは言い難いですが、概ねこんな話だったと思ってもらえれば幸いです。

雨漏りのする家をどうするか?

皆さんは家が雨漏りした時、どのように行動しますか?

雨が滴ってくる場所にバケツを置く方も多いでしょう。いわゆる対処療法です。

これを子ども・若者支援に置き換えるとサポートステーション事業などに代表される就労自立支援になります。

そもそも屋根を修理すれば雨漏りしないのではと考える方もいるでしょう。

子ども・若者支援なら、まだ困っていない、これから困る可能性がある人たちへ、相談・助言などを行うことでしょうか。

対処的な支援(すでにひきこもり状態である当事者へ支援すること)は時間もかかりやすく劇的な改善は難しい。対して予防的な支援(課題の多い生徒などへの支援)は当事者になる可能性を減らし、対処的支援する対象者そのものを減らすことができる。

石井さんはこの“予防的支援”を目的に「ぴっかりカフェ」をはじめられたそうです。

福祉を受けることも、就労することもできない若者への支援

自立して生きる方法として、現在の日本なら2つの方法があります。

1つに就労。何かしらの仕事をして生活を営みます。

2つに福祉の支援。障がいを抱えている場合など、就労自体が難しいことがあります。そういった場合は障害者手帳を取得して、障害年金の需給、その他支援を受けて生活していきます。それ以外なら生活保護を受けることになるでしょう。

しかし不登校・ひきこもり当事者など、困難を抱えている子ども・若者はこの両者のどちらも得ることができない現状です。

就労して自立したくとも、学歴・職歴の問題で非正規雇用など不安定な生活しか望めない。

障害者手帳を得ようと思っても、該当するほどの特徴ではない。手続きなどの知識がない。実は障害者手帳を得る方が適していても、本人や家族にそのつもりがない。

生活保護を受けるにしても、自宅などを保有していて受けることができない。

このような状態になりやすいリスクを抱えた生徒の特徴として「進路未決定」があるそうです。そして「進路未決定」の生徒が多くいるのが、課題集中校に分類される定時・通信制学校や普通科学力が低い学校です。

「進路未決定」は現在の問題を先送りにしていることが多く、いずれ就労も福祉も受けられない若者になってしまいます。

予防的支援はこの「進路未決定」の段階、10代・20代の若い世代にアプローチします。

また一旦所属を失うと、新しく支援につながることが非常に難しくなります。学校に所属している間は予防を施す適した時期でもあります。

「ぴっかりカフェ」とは?

「ぴっかりカフェ」とはクリエイティブスクールである神奈川県立田奈高校の学校図書館内で毎週1回、昼休みと放課後に開催される交流相談の場です。

日常的な会話などから、生徒の課題発見や悩み・不安を解消し、進路未決定や中途退学をゆるやかに予防することを目的に取り組んでいる事業です。

寄付やクラウドファンディングなどで運営しており、総計約200名のボランティアの皆さん(一回あたり8人程度)が参加されています。

ザックリ言うと生徒たちの憩いの場です。

図書館で音楽流しながら踊ったり、遠足のレジャーシートみたいなので屋根を作って(広辞苑で抑えてました)自分だけの場所を作ったり、ボードゲームひたすらしたり。石井さんはギターやウクレレを弾いているそうです。

そんな感じで遊んでいるかと思えば、図書館の片隅でボランティアの方に悩みを相談したりなどしています。

クリエイティブスクールと「ぴっかりカフェ」

クリエイティブスクールとは、神奈川県が取り組んでいる高校教育改革の一環として設けられた学校です。

小・中学校までに十分に力を発揮できなかった生徒を積極的に受け入れ、色々な教育活動を通じて社会生活をより良いものにする意欲と他者との関わりを大切にしながら、主体的に学び・考え・行動する「社会実践力」を育む学校です。

ちょっと抽象的過ぎて、分かり難いですね。詳しい事例を見てみましょう。

クリエイティブスクールは主に、不登校、学力不振(理由は色々あるでしょうが)、家庭の都合(貧困家庭とか)などで、中学校まで学校に馴染めなかった子を対象にしています。なので入試は面談と小論文です。試験は行われません。

従来より細かく教えて学力を身に付けてもらうことを目的としているので、1クラス30人以下(従来は40人)で構成されます。しかも数学・英語の授業では15人になるそうです。先生一人あたりの生徒数を減らすことによって、より丁寧に勉強を教えています。

ただし全日制・学年生の学校ですから留年の可能性があります。

またクリエイティブスクールの性質上、少々課題の多い生徒が集まりやすいのも現状としてあり、いわゆる課題集中校(指導困難校)に類することが多いです。

2017年現在、クリエイティブスクールは神奈川県内に田奈高校を含めて5校あります。

課題の多い生徒、また学校にとって「ぴっかりカフェ」は大変意味があり、事業実施されている理由でもあります。NPO法人パノラマでは、田奈高校の「ぴっかりカフェ」以外に大和東高校の「Border Cafe」も運営しています。

学校図書館で行う理由

「ぴっかりカフェ」は学校図書館で行われているのか?

保健室や空き教室でも良いのではと思った方も多いのではないでしょうか?

相談へ行くという行為は非常に勇気が必要です。支援を受ける必要がある事実が明らかになり恥ずかしい。周囲から後ろ指で指されるかもしれない。専門用語でスティグマ(烙印)と呼ばれるものです。

例えば、学校でケガもしていないのに保健室に行くということは、保健室登校をしてる、教室に入れないということを生徒自身が明らかにしているのと同義です。生徒は非常にスティグマを感じます。

その点、図書館は適しています。行っても恥ずかしくない場所です。

誰もが利用できる場所なので、仮に相談するつもりで訪れてもそんな風に見えないです。

交流相談

交流相談というのは石井さんの造語だそうです。

相談する意識を持たせず、雑談をしながら課題を引き出す方法です。

従来の相談は「〇〇のことで相談があるんですが…」という相談内容(専門用語で「主訴」)が相談者なりにハッキリしています。

しかし予防的支援の対象である生徒は悩み自体を認識していなかったりします。または「何となく不安」という漠然な悩みであったりします。

ボランティアや相談員と何となく雑談していると、何となく不安だったものがハッキリと認識できたりします。

相談員の側も、雑談の中から「これは気にしないといけないのでは?」と思わせる話が引き出せる可能性があります。

漠然とした不安が明確な課題になることによって、新しい発見があります。

信頼貯金から話を引き出す

ある生徒が、先生に連れて来られて「悩みがあるなら相談員の人に話してごらん」と言われても、相談員のことを知らなかったら「別に…」とか言って話ません。当たり前ですよね。どんなに立派な肩書があろうと、信頼のない人に自分の悩みは話したくありません。

しかし生徒が、相談員やボランティアの人たちの「ぴっかりカフェ」での活動や他の子と喋っている姿を見たりすることで、「この人なら喋っても大丈夫かも」と思わせることが出来ます。ふとしたキッカケで「実は…」と話してくれるかもしれません。

石井さんはこれを「信頼貯金」と言っています。

例えば、石井さんの場合はギターやウクレレを弾いたり、一緒に遊んだり、話しながら徐々に信頼されるように努めています。

また忙しい大人には「今喋ったら邪魔になるかも」と生徒は遠慮しやすいので、あえて“ヒマな大人”を演じることもコツだそうです。

「ぴっかりカフェ」の場合、この「信頼貯金」によって引き出された悩みを個別に相談する場として別に「青春相談室Drop-In」を設けています。

親と先生以外の大人を知る機会

困難な状況に陥り易い子ども・若者の傾向として「親と先生以外の大人を知らない」という特徴があります。

多様な価値観や情報を知らないが故に視野が狭く、行き詰りやすくなります。しかも学校は非常に閉鎖的な公共空間です。これを助長しやすい環境があります。

「家⇒教室⇒塾・部活…」のサイクルで日々を過ごしている子は多いでしょうし、大人であっても家と職場の往復しかないという方はけっこう多いと思います。

「ぴっかりカフェ」では多種多様なボランティア(元飲食店経営者・農家・雑誌編集者・作家・政治家・子ども食堂をしている方・地域の人など)が参加されています。また視察で他地域から来られる人も多いです。学校の卒業生もたまに訪れたりします。

そういった地域をはじめとした多種多様な学校以外の大人、そして価値観に接することができます。

時には学校の先生や相談員では解決できない悩みを、この大人たちが解決する知恵を持っていることも多々あります。

役割をシャッフル

生徒が出来ることが、先生をはじめとした大人には難しいことは多々あります。

皿回しをしている生徒と先生の写真を紹介されましたが、これは皿回しを生徒が先生に教え、先生が生徒に教わるという、役割のシャッフルが行われています。

社会において、空間で役割が変わることは当たり前です。例えば、職場であれば上司、同僚、部下、営業先の人など、一つの立場で演じる役割は多岐に渡ります。

この役割の変更を多くの大人と行うことで、社会に“慣れやすく”なりますし、また多様な視点に触れることもできます。

立場によって響く度合いが違う

先生「勉強しておかないと将来苦労するぞ」

支援者「将来苦労するから勉強やっといた方がいいよ」

どちらだったら勉強する気が起きますか?どっちもやる気しないかもしれませんね(笑)

しかし支援者の方が何となく説得力ありそうですね。

社長「君は十分働けると思うよ。バイトしてみたら?」

支援者「もうバイトできると思うから仕事探しをはじめよう」

社長が言うなら間違いないかもしれません。

母「あんたが心配で言ってるんだからね」

支援者「君が心配で言っているんだよ」

親に言われても何となく反発心が出ちゃいますから、まだ第3者の支援者なら素直に聞けるかもしれません。

近所の爺さん「若いうちの失敗なんて気にせんでええよ」

若い支援者「無駄な経験なんてないって。気にしなくていいよ」

やはり年長者の言うことは重みが違いますね。若い支援者では軽いですね。

つまり同じ内容のことを話しても、立場によって受け入れ方が違います。同じ悩みに助言をするにしても、誰が助言をするかによって効果は全く違います。


以上で終わりです。後は「ぴっかりカフェ」の写真をスライドで紹介され、写真の解説をされました。

まあ色々と、その時だけの話もあるので紹介できないですが、個人的にはこっちが面白かったですね。さすらいの占い師の話とか(笑)

例えば、学校の卒業生が生まれた赤ちゃんを石井さんに見せに来た時の写真がスライドで紹介されました。その赤ちゃんを女子生徒が抱いていたのですが、とても素敵な笑顔でした。

いじめの問題がメディアで取り上げられる度に、命の大切さが話題になります。下手な道徳教育より、赤ちゃんを抱いた感覚だけで命が大切であると実感できると思います。

アニの個人的な感想ですが、今回の「ぴっかりカフェ」は、学校の中に生徒対象のフリースペース(当事者向けの居場所)的機能を持ち込んで、それを多数のボランティアと地域の協力で大規模に行っている。そんな印象でした。

フリースペースは対処的支援の範疇になるでしょうが、十分に予防的支援にも応用できる。むしろそちらの方が適しているんじゃないかと思えるほどでした。

印象に残っている話としては、スティグマの話とかでしょうか。これは子ども・若者支援に限らず、支援では気にしなければなりません。しかし、気にしている人は案外少ないかなと思います。

例えば、不登校の子に対して「教室入らないでも良いから、保健室とかに来なよ(行きなよ)」と安易に言う方がいます。この方はスティグマに関して全く配慮のない方です。

不登校の子にとってみれば教室には入れないし、教室以外に行っても恥ずかしいです。保健室に行けばどうにかなるぐらいに思っているように感じます。

教室が無理なら保健室でという妥協案なのでしょうが、アニなら「そんな恥ずかしい思いするぐらいなら不登校したほうがマシ」と思っちゃいますね。

あと役割のシャッフルも興味深かったですね。

立場を変えて互いに教え合うというのは、かの吉田松陰が松下村塾で取り入れていた方法だと言われています。

学校は得てして先生から生徒へ一方的に指導することになりやすいので、こういう教える側と教わる側をシャッフルさせることで、相互理解が深まるように思います。

「ぴっかりカフェ」をそのまま長崎の学校に取り入れるのは難しい感じがありますが、何か良い風になると良いですね。

NPO法人パノラマや石井さん、「ぴっかりカフェ」について詳しく知りたい方はパノラマのホームページをご参照ください。

あと『週間 通販生活』にも石井さんのインタビュー記事があります。インターネットで検索してみてください。


『NPO法人パノラマ』についてはこちら


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